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胃がん撲滅プロジェクト

アンチバリウム産業医の石田です。こんにちは。

株式会社心陽では、胃がん検査のやり方を変えたいという企業のお手伝いをしています。


過去には、「ABC健診のすすめ」「それでもバリウム飲みますか」「バリウムが盲腸の真犯人」という、アンチバリウムコラムを書いてきました。

閲覧数十数回のコラムもある中、合計で7000回以上、閲覧していただいています

ありがとうございます!!!


過去のコラムで説明したとおり、1984年にヘリコバクター・ピロリが発見され、胃がんの原因だと明らかになりました。そもそも胃は、強い酸性消化液〈胃酸〉によって、嚥下物の有害性を最初の関門として守る器官です。この極度の酸性環境で生物が生き残れるはずがない、というのがそれまでの通説でした。


胃がん発症年齢のピークは65歳以降、退職後だからこそ、胃がん検診の目的は胃がんの早期発見以上に、胃がんリスクの提案にあります。


ピロリ発見当時の65歳は、保菌率が50%を超えている1920年生まれあたりでしたが、以降、毎年20〜30万人規模で除菌が進み、2012年に、ピロリの除菌が保険適用になると、年100万人規模に拡大されました。

2012年当初の65歳は1945生まれあたり、これはいわゆる団塊の世代で、人口も多いです。

ピロリ菌は幼少期の口移しで親から子にうつる経路が最も多いのですが、衛生環境の変化、核家族化や保菌者減少により、感染は激減し、令和の20代の保菌率は10%以下、10代は5%以下になっています。

一方、バリウム検査はピロリ保菌率が50%を超えていた1950年代、画期的な検査でした。当時の価値は非常に大きいです。


1950年代は戦争の終結に伴い、時代が大きく動きました。画期的な技術といえばトランジスタ、テレビの普及、「コンピュータ」という言葉が生まれ、DNAの二重らせん構造が発見され、膨大な情報をデジタル化する現在の入口が開いた時代でした。

ただ、当時、いかに先進的で優れた技術でも、2026年の今、活用する理由としては乏しいです。


一方、ピロリ発見の1984年はマッキントッシュが発売され、一般人がコンピュータを持つ、マイコン文化誕生の年です。ファミコンは1983年、当時はCDで音楽を聞き始めました。遺伝子工学、バイオテクノロジーが発展し、金融のデジタル化が進み、CNNが24時間ニュースを流し始めました。 アナログからデジタルへのガチ移行の時節です。


それでは2026年は?と私のChatGPTに問うと、「知能がインフラ化した時代」あるいは、「人類が“第二の認知層”を持ち始めた時代」だと答えました。


さて、となると胃がん検診のスタイルを変えるという会社の決定に対して、従業員たちはワラワラと生成AIから情報を得るのです。

昨年6月出版の話題になった論文にもあるとおり、非医療者がAIから正しい情報を引き出すのはかなりの無理ゲーです。

産業保健職が手伝ってくれる場合は別ですが、事務方だけで実現するのは難しいと思いますので、ぜひ、心陽にお問い合わせ下さい。


本日は実際のプロジェクトイメージを共有します。

プロジェクトイメージと各検査比較
プロジェクトイメージと各検査比較

私は、ABC検診を導入する前の準備期間の介入が、この胃がん撲滅プロジェクトの中で、一番重要だと考えています。


こうして、3つの検査を並べると、バリウムは、ABC検診の2倍以上の費用ですから、2倍以上の価値があるように見えます。会社の支払いなら、価値ある高価な検査を毎年したいと考える従業員は多いはずです。それを裏付けるように、放射線技師さんという専門職の人手が関わり、かなり医療っぽい特別な設備「レントゲン」や、日常生活で接することのない特別な放射性物質「バリウム」を使います。


ABC検診は、法定健診項目の採血検体を用いますので、検査を足した実感がありません。それは、私にとっては「楽」、「低侵襲」、「時間節約」、「費用削減」とよいことばかりに思えますが、多くの人々はもっとよさそうな検査、もっと検査の便益を実感できる検査を受けたいと考えるのかもしれません。良薬は口に苦し、という言葉がありますが、なんとなく医療行為は、苦しいほど効くような雰囲気があります。雰囲気だけで、エビデンスはありません。我々医療者は、よい検査を苦痛なく受けていただくべく、日々、努力しております。


一方、それではバリウムを受けたほうがいいと思っている人々が、結果所見を見て、何か行動変容をしているのかというとそうではないんですよね。どちらかというと、「検査費用」や「検査の苦痛」という情報のほうが、この検査があなたをどう健康にするか、どうリスクから遠ざけるかという情報に比べて、重大になってしまうのが現実です。

検査結果に応じた行動変容をしないのなら、会社にとっても高価な検査費用を負担する意義はありません。

大事なのは、従業員が事後の行動変容についてリテラシーを獲得したうえで、自分の受けたい検査を受けて、しっかりと行動変容することなんです。


ですから、胃がん検診を、これまでの内視鏡とバリウムからABC検診に変更する前に、会社はコスト削減のためだけでなく、従業員の胃がん発症や胃がんによる離職、死亡をなくすために英断したのだ、と伝えなければいけません。

そして、その結果、削減されるコストを、他のがん検診や別のポピュレーションアプローチに活用していくつもりだと伝えることも重要です。

ABC検診によるコストダウンが、全従業員にとって、より解決力の高い人的資本投資に回されれば、従業員の受ける便益の総量は増えるのです。


ABC検診による胃がんリスク層別化
ABC検診による胃がんリスク層別化

ABC検診の結果、4分の3近い従業員がA判定となります。B、C、D判定の方は保険診療で結果が出次第、上部消化管内視鏡を受診して下さい。

D判定の0.5~1%の1年以内の胃がん発生率は、とてつもなく大きい数字ですが、それでも100人に1人です。


除菌については、私は推奨派ですが、慎重派の意見もあります。

そういう意見を考慮したうえで、除菌しないという選択はありだと思います。

そもそも保険診療ですから、会社がどうこう言える立場でもなく、本人の意思によります。


とはいえ、内視鏡は絶対に受けてほしいです。

むしろ、ピロリ除菌したからA判定と同じ、と誤解するくらいなら、除菌しないで毎年内視鏡を受ける方が正しい選択です。

好みに応じて除菌しない選択肢はありますが、胃がんリスクは除菌で有意に下がります。私個人は除菌に後悔した患者を知りません。とはいえGERDの増加等の報告があり、推奨しない医療者がいるのも事実です。

いずれにせよ、ピロリ除菌はプロセスに過ぎません。A判定じゃない限り、絶対に定期的な内視鏡を受診してください。


検査の比較(記号は診断精度)
検査の比較(記号は診断精度)

比較には書いていませんが、上部消化管内視鏡は唇から空腸の入口まで、口腔内、咽喉頭内を含む上部消化管のすべてを観察することができます。

「バリウムが嫌だから」という理由で内視鏡を選択するのはお勧めですが、反対はお勧めしません。

なぜなら、バリウム検査で発見された異変を、次の段階で精査する方法は、内視鏡しかないからです。

表のようにバリウムの診断精度には限界がありますが、バリウムでなんらかの所見を指摘されたら、次のステップは100%、内視鏡です。

つまり、ABC検診もバリウムも内視鏡を受ける推奨度を決めるスクリーニングと捉えるとわかりやすいでしょう。

内視鏡の精度を信頼しているから、全従業員に毎年会社が費用負担して内視鏡を受けさせているなら、あえて、ABC検診にする意義はないでしょう。


バリウムをABC検診に変更した場合のコスト試算
バリウムをABC検診に変更した場合のコスト試算

とはいえ、ABC検診は健診コスト削減に大きく貢献します。

そもそも労働安全衛生法に定められる企業が費用負担しなければいけない健康診断に胃がん検診は含まれません。だから、超シンプルには、全部勝手にしろ、金は自分で払え、で法令上は問題ないんです。

しかし、これだけのコストが削減されるなら、保険で内視鏡を受ける26%の従業員に特別休暇を出すこともできるでしょうし、たとえばストレスチェックをai-XのX-checkに変えるなど、全従業員および組織にとって直近で便益の大きい施策への投資に回すこともできます。


胃がん撲滅プロジェクトに関心のある企業の皆様、お気軽にお問い合わせ下さいませ。

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